SENANG『癒しの空間』

Perfomance
リーナ・エダ実績

新しい視点と発想で時代を開く

SENANG
TBC東京ビューティーセンター
1989年〜1992年 

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『SENANG』
癒しの空間セナング
究極のくつろぎが美しさの秘密

リーナ・エダ
新事業立ち上げ 商品開発
癒しのサロン 企画プロデュース

セラピスト養成セミナー 教育指導

現在、代官山にあるTBC東京ビューティーセンターが運営する『SENANG』は、1989年に南青山にオープンした癒しの空間『SENANG』からスタートし、時代の波に乗りながら大きく発展した癒しのサロンです。『SENANG』1号店のプロジェクトの立ち上げに私が携わった経緯は、ちょっとした不思議なご縁によるものでした。当時、私は出入国のVISA の関係もありインドのお寺から一時帰国していました。ある日のこと、随分ご無沙汰していたのですが、私の中学生時代から写真撮影や映像作品などを一緒にクリエイトしてきたアート・ディレクターのオフィスを訪ねました。ここ数年の私はインド哲学やインド文化を学んだり、瞑想や呼吸法などを修得してたり、内なる世界の学びに没頭していました。そんな私の近況を知る友人であもあるアート・ディレクターの彼から「インドでの学びや健康に関する技術的なことを仕事に活かせないだろうか?」と質問されたので、「仕事の内容によっては活かすことは可能だと思います」と返事をすると、彼は何かを思いついたように、すくっと立ち上がり、「逢わせたい人がいるから出かけよう」と。そしてオフィスを出ることになりました。その行き先は黒澤明監督の黒沢プロダクションで、そこである方をご紹介され、インドで体験したことなどを話すことになりました。すると、今度はその方から「東京ビューティーセンターが新しい企画を求めている。インドで学んだ技術を盛り込んで企画を立て提案できるか?」と質問されました。20歳の頃から企画を立てるのは得意だったのことと、友人のアート・ディレクターからも「いい機会だ、是非やってみたら?」と背中を押されたこともあり、『YES!』と勢いよく返事をし、その仕事を引き受けることなりました。その後、企画を提案するにあたり、今の現状などを伺ってみると、TBC東京ビューティーセンターの社長へプレゼンテーションを幾度かしているとのことでした。しかし、これまでの提案はすべて「NO!」と断られてしまったとのことでした。また、その社長に対して行うプレゼンテーションは1分プレゼンであると言うのです。えっ!と思わず、私は驚いてしまいました。1分で的確に企画の内容を伝えられないと「NO!」と断られるとのことだったのです。何か大変な使命を背負ってしまったと思いましたが、もう後戻りできません。こうなれば、皆んなの期待を背負いながらも、新しい企画を立て1分プレゼンを成功させることが私の使命となりました。

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『美』の追求
女性の美しさは内面から溢れ出すもの

まず最初に東京ビューティーセンターを経営しているコミー株式会社の理念を調べることにしました。そこには『』の追求がテーマとして問われていて、“美に対する価値観や考え方の違いは多種多様にあるものの、共通の「美」があると。それは人間が本来持ち合わせている内面の輝きだ”と提示されていました。この言葉に私は感動し納得したのを覚えています。当時のエステティックというと、ニキビや肌荒れ、肥満のダイエットなど、外面的な問題に対処するためのアプローチがほとんどで、“内面の美”に目を向けるサロンや組織はありませんでした。しかし、東京ビューティーセンターの運営母体であるコミー株式会社の理念は違いました。「最も大切なものは『』を追求することであり、ひとの内面に目を向け「素質」を引き出すことであり、それがエステティックの真髄である」と。今後は東京ビューティーセンターを中心拠点として全国展開を行なっていきたいと熱き思いが語られていました。私はこの企業理念に基づいて新しい企画を立てることにしました。

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『美』の追求
エステティック”とは、

美の、美学の、審美眼のある、
を意味する言葉です。

私は若い頃からファッションモデルとして仕事をしてきましたが、どのような時でも“内面の美”を表現しようと努めてきました。見た目が美しいだけでなく、内面の美しさや心の豊かさが自然に表現されるよう、日頃から心を磨き精神を養うことが何よりも大切であると思っていました。そうした私の心情と東京ビューティーセンターの企業理念はまさにシンクロしているので、少しも違和感を抱くことなく、『美』への追求を主軸に、ありのままの思いを表現いながら企画を立てることができると安心しました。これでプレゼンテーションへの一歩が確実なものとなりました。また、東京ビューティーセンターの企業理念には“エステティック”という言葉の問いかけが記されていました。本来、エステティックとは「美の、美学の、審美眼のある」を意味する言葉です。そこに記されていたことは、「一人ひとり肌質も違いライフスタイルも違う、そして心の悩みも違う、そんな女性たちの願いを察して、お肌や心を豊かにしていくのがエステシャンの技量である」とありました。私はそれらを拝見しながら、心の内で素晴らしい!と感嘆の声をあげたものです。“女性が美しくある”ということは、外面の美しさだけでなく内面から溢れてくる美しさはもちろん欠かすことができません。また、その美しさが静的なものであっても本当の豊かさには結びつくことはありません。その美しさを動的なものとして、人生の中で豊かに表現してこそ本来の力が発揮されます。一人の女性が素晴らしい社会生活を送り、素晴らしい家庭生活を築いてこそ、その女性の美しさが一層輝きを増し、いのちによって引き立ってられ、実り豊かな人生へと発展していきます。これこそが『女性の美しい生き方』であると私は確信しました。


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『美』の追求
“審美眼”とは、

本質的な美を見極める力です。

東京ビューティーセンターの企業理念をさらに読み進めていくと、「幅の広い知識と経験を積んだカウンセラーによって、一人ひとりの状況に合わせたパーソナルプランを作成し、科学的なデーターに基づいた多彩なコースを組み合わせ最適なプログラムを提供します。その女性が人生のあらゆる面で輝いて生きるためのサポートをしていきます」とありました。そして最後は「東京ビューティーセンター(TBC)独自の技術で女性の心を健やかにしながら、私たちは企業として“審美眼”(=本質的な美を見極める力)を磨き続けていきます」と力強く宣言されていました。

私これらの企業理念に関心を寄せながら、プレゼンテーションするための準備に入りました。まずは企業理念として打ち出している“『美』の追求”  を主軸のキーワードとして選び、次に“内面の美へのフォーカス” を具体的なアプローチのキーワードとして選び、それによって得られる成果として“本質的な美を見極め磨く力”を〆のキーワードに選びました。これら3つのキーワードをコンセプトに掲げながら企画を掘り下げていきました。この企画の主題となったのは、エステション自身が美の追求に関わり、自らの身体だけでなく心の内にも意識を向け、心身をトータルに磨くことで美しさを発揮させる、そのエステシャンの美しさと心の豊かさを通して、お客様である女性たちの美しさと心の豊かさを引き出すことが大切であるとしました。そのための新しい技術の修得であり、新しいコンセプトに基づいた新店舗としての事業展開でした。新しい技術面での指導としては、大脳生理学を通じて脳波と健康との結びつき、深層心理学を通じて心のあり方と健康との因果関係、自らの内なる世界に触れるための呼吸法や瞑想法の導入、インド滞在中に学んだロングストロークによる緩やかで心身の深部にまで癒しのパワーを浸透させるボディワークの技術の提供でした。インドの伝承医学であるアーユルヴェーダーの叡智なども大切な要素として取り入れながらプロジェクトを組み立ていきました。その他、それらをサポートする枠役として、アロマ(香油)やインセンス(お香)やヒーリング・ミュージック(音楽)などの活用方法を指導することなどを盛り込み完成させました。

snncap_5 『女性の生き方』
しなやかに凛として生きる女性

東京ビューティーセンター(TBC)で働く女性たち、職種的にはカウンセラー、エステション、マネージャー、オペレーターなどがあり、彼女たちの意識のあり方や生き方、そして仕事への姿勢を知りたいと思った私は会社を訪ね、入社案内を頂いてきました。それに目を通してみると、「私たちは女性の生き方と働き方を考える、女性たちが最も輝ける仕事や環境を本気で考えています」とあり、それに続く言葉は「社会で働くことが生き方に彩りを与え、ライフスタイルを洗練することでビジネスに磨きをかける、女性だからと意固地にならずに、しなやかに、凛として生きて欲しい」とあり、働く女性に素敵なエールが贈られていました。

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ついに社長へプレゼンテーションする日がやってきました。私は友人のアート・ディレクターと黒沢プロダクションの方と三人で新宿センタービル43階にある本社を訪ねました。会社内は大変活気があり、前向きなエネルギーに満ちていました。少し待ち時間があり、お茶を飲みながら心の準備と整え、三人で待ちました。しばらくすると秘書の方がいらして、私たちは社長室へ案内されました。最初に社長に挨拶をした後、黒沢プロダクションの方から私の紹介があり、私がプレゼンテーションする時がやって来ました。私はよーし!と背筋をピンとし、新しい企画を言葉にしようとしたその瞬間、社長から「君は何をしたいのか?1分間で説明してくれ」と突然いわれ、“わー本当に1分間プレゼンなんだ”と改めて驚きました。しかし充分な準備を整えていた私は、社長から与えられた1分間で熱き思いを伝えました。1分間なので説明る時間はありません。また何か特別なことを言ったのでもありませんでした。うる覚えではありますが、「エステの語源である“内面の美”を引き出すためには、新しいプログラムが必要です。その新しいプログラムを私は提供できます」とシンプルに単刀直入に言ったと記憶しています。あまりにシンプルだったのか、急に社長は笑い始め、「そう、いいね。どんなことができるのか知りたいね〜」と。ひと言プレゼンは度橋よく言ったものの、その後はドキドキ心臓は高鳴り、手に汗をかき、急に頭の中が真っ白になりました。しかし状況は、社長の高いハードルを突破したようで、その後、新しいプロジェクトのための企画提案を聞いてもらう時間が与えられ、無事にプレゼンテーションは終了しました、どうにか使命は達成されました。こうした経緯を経て、新しい企画を本格的に実行段階に移すことになりました。新しいプロジェクトの仲間が集まり、企画を掘り下げる中、意見の衝突や行き違い、紆余曲折な出来事など多々ありましたが、そうしたことに振り回されず、『自らがやるべきことをやる!』精神で、次々と準備を整えていきました。

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『心のエステ』
内面の美を引き出すプログラム

まず最初に取り組んだのは、エステシャンたちの教育指導です。新しいプログラムを導入することを目的に、数十名のエステシャンたち候補者を会社サイドが選びました。次にその候補者の中から新しい技術を取得する情熱のある女性を選び、人数を絞り込みました。こうして新しい技術を習得するためにエステシャンが選ばれ、ついに最初のトレーニングの日が訪れました。新宿センタービル43階の会社内にあるトレーニングルームに入ると、候補者に選ばれた女性たちの意気揚々としたエネルギーが伝わってきました。しかしよく見ると、彼女たちのきらびやかな服装(ボディコンスーツや革のワンピース)に唖然とし、驚きを隠せず、言葉を失ってしまいました。新しいアプローチや技術を修得しようとする学びの意識ではなく、スキルを身につけトレーニングに励む心の姿勢もなく、どこかパーティーや同好会に参加している女性の姿であり、仲介者であるマネージャーの伝達はどうなっているのか疑問が生まれました。彼女たちの姿を見た私の内側からは大きなため息がこぼれ、この先も思いやられるに違いないと察し、ここでくじけては仕方ない、さあ、覚悟を決めるぞ!と自分に言い聞かせました。彼女たちの心の姿勢は自分以外のエステシャンをライバルとして認識し、女性同士で張り合い競争に勝つか負けるかような意識に溢れていました。トレーニングルーム全体にビンビンと張り詰めた空気が漂っていました。私は彼女たちのそうした思いを汲み取りながら、トレーニング以前の段階から教育指導しなくてはならないことを理解しました。まずはトレーニングに挑むにあたり、服装、髪型、食事、時間の使い方などを含め、新しい技術を学ぶための心の姿勢を整えながら指導していきました。

しばらくして前段階の準備が整い、本格的なトレーニングをスタートする時期となりました。エステシャンたちはエステシャンとしての枠を超え、セラピストとしての新しい視点を養い、新しい物の見方を学び、新しい技術の修得に一生懸命に励んでいきました。最初の教育指導がスタートしてから数ヶ月に渡るトレーニング期間でしたが、最後までトレーニングに参加し、すべてのプログラムをやり遂げた女性は6名になりました。その他の候補生の女性たちは、エステシャンとしての枠を超えることができず、また新しい学びに対する抵抗が生まれるなど、いろいろな理由から一人また一人とトレーニングから脱落して行きました。トレーニングの基本メソッドは、呼吸法と瞑想を基軸に組み立てたもので、静けさの中で呼吸を整えながら自らの心に触れ、その心の内に入りながら浄化クリアリングすることから始めました。美しい音楽の旋律に心身をゆだねながら少しずつ心を開放することで、ハートの内奥のフィールドに触れていきます。心の浄化(ネガティブな感情や思考のお掃除)が進んでいく人にとっては、心は解放され心地良いエネルギーに触れることで深いレベルから癒されていきますが、心の内に悲しみや痛みを抱えたまま閉ざしている人にとっては、その傷に触れることもあるため大きな抵抗を感じてしまいます。また違った側面では、職場での勝ち負けや売り上げにばかり重きを置く人も、このような自分の心に触れて苦しくなり理由を見つけて去って行きました。いろいろな意味で、自らを偽って生きている人にとっては辛い時間とな ってしまいました。自己を見つめ、自己の内奥に触れながら真の自己と向き合い、本来の自分が持つ才能や可能性を発揮させて生きるには、心の浄化はとても大切なことです。心の浄化なくして新たなステージの扉が開くことはありません。ただし、無理にこじ開けようとすれば、かえって自己否定や自己批判に繋がってしまいます。物事にはベストなタイミングがありますので、タイミングが違う時には無理をしないことです。自己を見つめる機会を得た人は、静けさの中でゆったりくつろぎながら少しずつ内奥に触れ、心の悲しみや痛みをそっと手放しながらお掃除し、『自己の心いう鏡』を磨いていく大切なヒーリング・ワークを行うことができました。

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『心を磨く』
心の内側に入り己を知ることからスタート!

東京ビューティーセンター(TBC)で彼女たちのトレーニングが開始されると同時に、TBC側の新規プロジェクトの担当者となった女性マネージャーの方からリクエストを賜りました。エステシャンだけでなく、彼女たちにも自己の内面へ誘う呼吸法と瞑想を教えることになりました。1日のトレーニングが終わった後、会社が所有しているゲストルームを活用しながら、有志の方々数名に瞑想指導を行いました。彼女たちは男性社会の中で肩身の狭い思いをしながらも、自らの意識を高め、力強くチャレンジしている女性たちです。どちらかというと心の余裕はなく忙しい毎日に翻弄されていることもあり、心身はかなりくたびれていて心もぼろぼろの状態でした。瞑想が終わると最後に一人ひとりとハグするのですが、その身体を抱きしめるたび、エネルギーが枯渇し折れそうな身体は痛々しく、彼女たちが心にしまっているたくさんの悲しみが私に伝わってきました。日本の社会だけでなく世界を見ても西暦2000年以前の時代は女性にとって厳しい時代でもありました。ひとりの女性として会社の中で一人前になるためにどれだけ多くのことを犠牲にしてきたのか、今日の地位まで昇るためにどれだけ涙を流してきたのか、彼女たちの心の闇に触れるたびに胸が苦しくなったのを覚えています。ここでの瞑想指導は瞑想を教えるだけでなく、人生のあり方や日常生活の生き方への提案の機会でもありました。瞑想ライフとはもっとも隔たりのある生き方をしている彼女たちでしたが、彼女たちこそ最も必要としている人たちでした。このような機会を通じて、呼吸法や瞑想が上手くできるできないが問題ではなく、一週間に一度、こうした静かでやすらぎのある時間を持ち、瞑想を一緒に行うという共感の場を持つことが大切であり、彼女たちにとって“心の救い”になっていました。

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東京・南青山に『SENANG』がいよいよオープンすることになりました。この店舗はこじんまりとした空間ではありましたが、トンネルのように回廊を奥に奥にと入っていく作りは母の子宮の中へ入って行くような気持ちになり、お客様にほっとする安心感を与えました。私はこの空間をイメージデザインするにあたり、今までのエステティック・サロンとはまったく違うコンセプトを打ち出し、新発想で構築させていきました。日本人の本質である和のテイストを中心にインテリアデザインをイメージしました。御影石や黒曜石を敷き詰め、白い障子や大きな扇をスパイスのように空間に配置し、お香を焚き、癒しの音楽を心地よく流し、まさに日常とは別世界の神秘なる癒しの空間を誕生させました。当時の日本は現在のようにヨガやメディテーションが一般的に普及していない時代だったこともあり、“癒し”という言葉も、“ヒーリング”という言葉も使用を禁止されていました。新しい店舗を完成させるまでには様々な制限や制約はありましたが、厳しいトレーニングをやり終えた光り輝く女性スタッフと共に、その空間を癒しのエネルギーで満たして行きました。当時からすると、かなり時代を先取りをしたこともあり、一般のお客さまにとって“心を癒す、体を癒す”ということにお金を払う用意はありませんでした。この場所から『癒し』という新しいムーブメントを生み出したいと思っていましたが、残念なことに、日本の女性が“心身を癒す”ことに興味を持ったのは数年先のことになりました。

癒しの空間『SENANG』のサロンにいらしたお客さまは一般の女性というより金銭的に余裕のあるマダムや心身のケアを誰よりも求めている著名人などセレブな方々が中心となりました。もう少し広がりのある世界を描いていた私にとって、この現状は少し残念に思われました。そんな思いを抱く私に良報が届きました。TBCの幹部の方々から「日本にこの流れが来るのは数年先のことになるだろうけど、日本で最初に“心のエステ”を誕生させた功績は大きい。私たち企業が最初にやったことは嬉しい限りだ」と、高い評価を頂くことができ、ほっと胸を撫でおろしたものです。まさに“癒しの空間づくり”の最初の種蒔き役だったのです。実際には数年後、多くの女性が“心身を癒す”ことを目的にエステティック・サロンやヒーリング・サロンを訪ねるようになりました。こうして振り返って見ますと、不思議なご縁に導かれながら、ふっとした出逢いから新規プロジェクトを立ち上げ、また、愛する日本に『癒し』という新しい種蒔きの役割りを天から授かり実行することができたのだと、改めて深い感謝の気持ちでいっぱいになりました。

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『癒し』という新しい種を蒔きました。

『SENANG』癒しのサロンで行う施術(セラピー)は、私たちの内に眠る生命の神秘を呼び起こし、『本来の自分への回帰』を目指すものでした。深い呼吸と共に心の内奥へ入り、自らのありのままの姿に触れる、そのプロセスの中で心は洗われ、心身は生気(プラーナ)を取り戻し、生命の息吹に触れることで生命の力を回復させていきました。本企画でパンフレットを制作する際のこと、当時の日本では「癒し、ヒーリング」という言葉はまだ解禁されておらず、宗教的な色合いが濃い言葉とされ、すべての制作物から削除するように指示がありました。そこで「癒し、ヒーリング」とは違うテイストの言葉に置き換えて表現し直すことになりました。『SENANG』のパンフレットやご案内状、サロンで使う言葉使いや販売する商品など、すべてに反映させる必要がありました。どのように表現すればベストなのか、どのような言葉だと真意が伝わるのかなど、言葉の表現に悩みました。最終的に私が選んだ言葉は「自然、回帰、生命、呼吸、息、静けさ、やすらぎ、美しさ、優しさ、思いやり」でした。このような言葉で癒しの世界をうまく表現していこうと決め、どこかの詩人のような気持ちで丁寧に言葉を紡いでいきました。

当時、エステシャンの女性をセラピストとして教育指導する機会を得たことから、日本女性の意識をじっくり観察し調査しました。当時、多くの日本女性は外見や身体や食べ物にばかり心を奪われ、自らの内面を育てることや心のあり方などにはほとんど目を向けていないことがわかりました。そうした現状を認識したこともあり、エステシャンからセラピストへ成長させるためのトレーニングでは、「女性の美しさは身体だけでなく心の姿である内面の美しさが滲み出てこそ、身体もさらに一層輝きを増し美しくなる。美の源泉はあなたの内側にあり、その源泉に触れることで本来の美しさが目覚め、あなた自身をトータルにコンディショニングする力を獲得することができる。その時、人生はより豊かなものとなり、あなたの可能性は大きく開かれていくのです」と、彼女たちを叱咤激励しました。『SENANG』のサロンでの採用人数は5名から6名と決まっていましたが、最初の候補者数十名から順次、脱落していき、最後に残った6名がサロンの正式メンバーとなりました。この時、彼女たちはこれまでのエステシャンとしての自覚から、さらに高みへと昇り、お客さまの心身を癒す“癒し手”として自覚に目覚め、セラピストとして大きく成長していきました。

『SENANG』でのセラピスト養成のためのトレーニングでは、エステシャンの世界では常識とされてきた数多くの事柄が、新しい学びでは真反対の局へシフトする事柄も多く、色々な意味でセラピストへの抵抗を感じたことは無理もありません。今の時代ならどうということのない事柄でも、当時は大きな心の抵抗を生む事柄だったのです。彼女たちは自らの殻に直面し、その殻から抜け出したいと願う人と、その殻から抜け出すことに恐怖を感じる人にわかれて行きました。自らの殻から抜け出したいと願う人は、ある意味、清水の舞台から飛び降りるような気持ちでトレーニングに挑んだのだと思います。数年を経た現在では、あの当時彼女たちが感じていた心の抵抗は新しい常識となり、多くの人の基準となっています。いつの時代も先人を切って新しい冒険に出る人たちは勇気と情熱と探求心が求められ、自らの心の抵抗を越えて、大きな一歩を踏み出す勇者のスピリットが必要です。これはリーダーとなる者の天の試練といえるのかもしれません。

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『SENANG』
それは癒しの空間であり、

自分へ回帰する場所。

『SENANG』に施術(セラピー)を受けにいらっしゃるお客様への対応に関しては、これまでエステシャンとして教えられてきた対応とはまったく異なるアプローチを指導し、新たな学びを得る機会を作りました。これまでのようにお客様を褒めたり持ち上げたりするのではなく、静かに寄り添うように相手の言葉に耳を傾け、心にある想いや開放したい気持ちを優しく受けとめ、そっと解放させる方法を学びました。日本人は本来、か“おもてなしの心”がDNAにある民族といえるので、このような思いやりのあるお客さまへの対応は抵抗なく受け入れられるはずですが、エステシャン教育において反対のアプローチを学んできたことから受動的ではなく能動的な対応が身についていました。彼女たちにとって静かなアプローチは不安を感じさせ、お客さまが再びサロンへ足を運んでくれるのか?とても心配だという感じでした。従来通り、“お客さまを褒め称えいい気分すれば、必ずサロンへ来てくれる”という信念体系が支配していました。それでも数ヶ月間トレーニングが進んでいく中で、彼女たちは少しずつ変化していきました。自己の内面へのアプローチが功を奏し、本来の自分の真顔に触れ、以前より心は落ち着き、呼吸はゆったり安らかなものとなってきました。食事や休みの日の過ごし方にも自ずと変化が訪れるようになりました。彼女たちはこれまでの常識や観念的な制約から自由になり、自分を苦しめていた考えや思い込みからも自由になり、本来の自分を取り戻し始めました。静かな時間を作り、瞑想するたびに本来の自分に触れ、優しい気持ちや思いやりの心が甦り、人を癒すことや人を思いやる心が溢れてきました。深い呼吸と共に心身が深く寛ぎリラックスするたびに、彼女たちの心の浄化は進み、根底から変容していきました。まさに『自分への回帰』です。誰でも心の内奥にある本来の自分に最初に触れた時は大泣きをし、なぜか懐かしさを感じ、子供のような気持ちになります。こうしたプロセスを経て、心の浄化クリアリングが始まり、本来の自分の持つ潜在的な力や可能性が発揮される契機となり、光り輝く一人の美しい女性として目覚めていきます。

『SENANG』がオープンした頃には、彼女たちの誰もが本来の自分を取り戻し、癒しの空間であるサロンにいらっしゃるお客様への対応もゆったりしたものとなり、思いやりのある癒し手そのものの姿に変容していました。お客様には心身ともにゆっくり寛いだ癒しの時間を過ごしてもらうために、施術に入る前の心得、施術中の心得、施術が終わった後の心得、三つの心得を伝授していきました。また、お客様との出会いは一期一会であることを肝に銘じ、ドアを開けてサロンに入られた瞬間から、一緒に歩くペースや、会話をするペースにも注意を払い、ゆったりリラックスして快適に過ごせるよう充分な配慮を教えました。実際、お客様に施術を行う彼女たちの心にゆとりがなければ、お客様を癒しの世界へ誘うことはできないからです。こうして彼女たちはエステシャンの枠組みから離れ、セラピストとして新しい枠組みを選択し、自らの足で歩き始めました。まさにパラダイムシフトです!

トレーニングを最後までやり抜いた6名の女性たちは、キラキラと目を輝かせながら、新しい世界を発見した冒険家のように『SENANG』を通して、癒しの仕事に励んでいきました。それから数年後のことになりますが、南青山の『SENANG』は新しい場所を得て、代官山に新しい癒しの空間として『SENANG』が誕生しました。当時の6名のセラピストの内3名は東洋医学に開眼し鍼灸や整体を学びながらその方面や仕事を移し、2名はアロマセラピーに目覚め学びを深めながら、それぞれの道を歩き始めたと、TBCの女性マネージャーから伺いました。エステシャンの世界は今でも競争社会が続いていて、かなり厳しい戦場ということもあり、彼女たちはそうした女性同士の争いの世界から抜け出し、己の道を歩み始めたのです。きっと、新しい時代の先駆者となり、どこかで活躍されているのだと思います。すべては大切なプロセスであり、そうしたプロセスを通じて、さらに自己成長し、自己実現の道へと導かれていくのです。

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誰でも美しくなれる力を持っています!

『SENANG』では、エステシャンによる施術以外にもお客様がリラックスしくつろげるよう創意工夫を凝らしました。心地よい音楽、香り漂うインセンス、カラダが温まるハーブティ、日本人の心がやすらぐ畳の間、御影石など小石を敷き詰めた廊下など、和のテイストと東洋オリエンタルなテイストを織り交ぜながら『癒しの空間=イヤシロチ』を創りました。この『癒しの空間』に入っただけでお客様がくつろぎ、心身の緊張が解き放たれ、本来の美しさが内面から溢れだし、深い心地よさに心身ともに満足されるよう配慮しました。当時はまだ馴染みのない言葉でしたが、現代でいう“ホリスティック・ビューティー(統合された美しさ)”を目指しました。ホリスティック(Holistic)という言葉は、ギリシャ語で「全体性」を意味する「ホロス(holos)」が語源です。 そこから派生した言葉には、whole(全体)、heal(癒す)、health(健康)、holy(聖なる)などがあります。“ホリスティック・ビューティー”に於いて『癒し』は心身の深いレベルから起こり、心身を浄化クリアリングしながら意識を高め、心身をさらに美しく磨きながら全体のバランスを整え、最終的には自らの内に美しい調和をもたらします。そうすることで、一人ひとりが持つ本来の美しさは甦り、内面だけでなく外面的にも一層美しさが甦ってきます。そうしたプロセスを経てはじめて、愛する心や思いやりのある心で相手に接し、また生きる歓びに満ちた有意義な人生を送ることができます。私はトレーニングの中で、このように声高らかに提唱し指導を行っていきました。癒しの空間『SENANG』が南青山にオープンし、新店舗プロジェクトも軌道に乗ったこともあり、私は肩の荷を降ろし、大きく深呼吸を自らの内に入りました。そして深い瞑想の中で、魂の故郷であるインドへ向けて再び旅立つ決意をしたのです。

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

付録

リーナ・エダ監修
『MEDITATION』
瞑想BOOK&音楽テープ発売!

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『SENANG』癒しのサロンで、最初に始めた呼吸法や瞑想によるリラクゼーション・メニューはマダムやセレブの間でとても人気があり、自宅でも音楽を聴きながら瞑想できる商品が欲しいとのリクエストを受けました。そこで、瞑想BOOK&音楽テープの商品開発を行うことになりました。美しい写真とイラストで構成された瞑想BOOKと音楽テープ2本がセットになった商品で、自宅で音楽テープを聴きながら30分〜60分間、一人で瞑想を行えるよう企画を立てました。瞑想を始めたばかりの初心者は雑念が出てきてしまい、中々心の内奥に深く入れないため、この音楽テープでは誘導瞑想による言葉を入れて、心の内奥へスムーズに誘われ瞑想が深まるよう創意工夫しました。音楽を制作する手順としては、最初に瞑想のイメージデザインを行い、そのイメージデザインに沿ったコンセプトでアーティストの方に音楽作りをして頂きます。今回の音楽作りでは音楽のリズムに「陰陽・静動」とそれぞれ2つの異なるタイプで表現して頂き、一方は静寂でやすらぎのある音楽、もう一方は情熱的でダイナミックな音楽、こうして2種類のオリジナルな楽曲が創作されました。瞑想BOOKでは、瞑想のある暮らしが豊かさやイキイキとした毎日を創り出すことや、自らの内面が充実し満たされることで生きる歓びや幸せ感を感じることなど、エッセイを主軸に詩ポエムを散りばめて瞑想の素晴らしさを表現しました。

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リーナ・エダ監修
『MEDITATION』
瞑想の薦め

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瞑想BOOKから抜粋

あなたは瞑想に導かれながら、あなた自身の様々な面に触れることになります。心と体が解放されると感受性が高まり、心豊かになっていきます。不安や怒りはあなた自身に対する信頼のなさ、大いなる自然に対する信頼のなさ、故のものだと気づくでしょう。信頼のなさは怖れや不安を生み、どうにかしようと悪戦苦闘します。そして悲しみや苦しみを創り出してしまいます。自らの心のあり方を理解し、あなたの内側に作ってしまったブロック(障害)を見つけ解放することが大切です。あなたの人生に起こる出来事はベストなタイミングで起きてきますので、知らない振りはできません。そして目の前に起こる出来事はあなた自身の内面の現れでもあり、あなたに気づきを与えようと起きているのです。

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瞑想BOOKから抜粋

瞑想を日々の行いとして続けることで、心の内側に触れる機会は増え、心の暗い部分や闇の部分にも明かりを灯すことになります。奥に隠れていた悲しみや痛みは明かりによって浮き彫りになり、やがて解放されていきます。心身が解放されるほど内なる感受性は高まり、大きく成長するためのステップが用意されているのに気づくでしょう。あなたが留まることを知らず、人生の流れに身をゆだねるのなら、新たな可能性は次々とやって来ます。さあ、大きく深呼吸をしながら大自然の中へ自らを解放していきましょう。

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夕暮れは
虚空の中へとすべてを溶かし
ありのままの姿を知らせる
空からは妙なる調べが降り注ぎ
辺り一面に響き渡る

美しい調べの中
時を超え存在するものよ
胸が痛いほどの切なさに震える
美しい調べの中
心を色づけするもの達よ
目元は潤み
すべてを捧げたいと願う

悲しみ 喜び 涙 笑い
はかなくも美しい無常のひとひら
深まりの中 静かな時を迎え
これが永遠であることを祈る

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

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⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

追記

『SENANG』癒しの空間

インドへ旅立つ私はサロンを後にした。
都会の喧騒を離れ、
大自然が迫るインドの大地に向けて、
再び出発した。

東京・新宿の高層ビルにてスタートした
新規プロジェクトを思い出す時、

時間が止まっていたように感じた。
それは儚い夢の中のことで
消えゆく幻想のようにさえ思えた。

『SENANG』の仲間と約束を交わした。
一ヶ月の間インドで過ごした後、
日本へ帰国した際には、
真っ先に『SENANG』へ向かい、
一緒に新しい事を始めようと約束した。
それなのに、
一ヶ月後日本に戻ることはなく、
私は約束を破り、
私が日本に戻ったのは、
それから一年も後のことであった。

『SENANG』に蒔いた種は成長し、
南青山のこじんまりしたサロンから
代官山の華麗な洋館へ事業は拡大した。
ウエディング関係の事業も加わり、
新しい局面を迎え、大きく発展した。
私はプロジェクト・リーダーから
永久会員の資格を持つメンバーカードを
感謝の印としてもらった。
しかし、私の心はこの場にはなく、
すべてが他人事のように感じるのだった。

⭐️⭐️⭐️

新しい癒しの空間の誕生

まばゆい陽光が射し、

いのちが煌めく癒しの空間が誕生した。
様々な人たちがプロジェクトに加わり、
次々と美しい世界が描かれ、
素晴らしい癒しのサロンへと発展した。
我が子の成長を愛しく思う母のように

心から嬉しかった。
私の撒いた新しい種は、
3年の年月を経て美しい花を咲かせた。

さあ、次のステップへ
自らを昇華させる時がやってきた。
新しい種を蒔く、

さらなる道へ向かって歩む始める時が
目の前に迫ってきた!

リーナ・エダ
合掌

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

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